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僕の一番好きな歌人の笹井宏之さんのブログが更新されないなぁ、と思っていたら、亡くなっていた。歌人ってのは短歌詠みのことだ。

幸運にも死が僕の側にあったことは少なく、どういうものなのか理解しているとは思えない。
ただ僕が人生で一番涙を流したのは、叔母が死んだときだったのは覚えている。
誰かと誰かを分つときにそのファクターが旅立ちだったなら、相手の元気な姿を想像して気を楽にする、という能力を人間の脳は持っている。
もしかしたら2度と会うことの無い相手だとしても。
だけども死だろうが距離的な離別だろうが、「コミュニケートできない」という状況は同じだ。
死別も離別も、僕は同じように悲しく思う。
その人を自分の中にトレースできているのなら、相手が実際に生きているか死んでいるかはそれほど問題じゃなくて、その人が自分に何か作用する、していた、というところがポイントになる。
物理的な存在の有無は焦点に無く、その人の持つ価値は全く変わらない。
観測点の差異が評価を多少変えるかもしれないけれど、それは全てのことについて言える。

僕の文芸、特に詩歌についての造詣は浅い。ワイキキビーチのように遠浅だ。
でも笹井宏之は天才だと思っている。
僕の言葉選びはこの人からものすごく影響を受けているし、短歌っていうジャンルにビリビリ来たのも、この人の歌に初めて触れたときだ。22年生きて分析した傾向として、儚さとか優しさに僕は弱い。世界の中心で愛を叫んだり空に恋するのには強い。彼の作品はやさしくて、あたたかく切ない。

ちなみに、57577の31音で言葉の力を増幅させる、というアイディアは英語には無いので、英語圏の人たちに説明してもうまくいった試しが無い。

僕の好きな笹井宏之の短歌をいくつか紹介して追悼のかわり。

からっぽのうつわ みちているうつわ それから、その途中のうつわ (笹井宏之)

終止符を打ちましょう そう、ゆっくりとゆめのすべてを消さないように (笹井宏之)

しまうまの模様のはがれおちたのをさみしい部屋に貼り付けてやる (笹井宏之)

直線がすこしぼんやりなるころに私、あなたに集約される (笹井宏之) 

もうそろそろ私が屋根であることに気づいて傘をたたんでほしい (笹井宏之)

ひだまりへおいた物語がひとつ始まるまえに死んでしまった (笹井宏之)

空と陸のつっかい棒を蹴飛ばしてあらゆるひとのこころをゆるす (笹井宏之)

いいなって思った人は歌集貸すから言ってね。

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コメント

うわ、めっちゃかりたい

投稿: たむらり | 2009年4月 9日 (木) 02時07分

57577、すげえって思うよね!
風という名前をつけてあげました それから彼を見ないのですが (笹井宏之)

殆ど無いけど詩も書くみたいで、

『飴色時間』

あなたが半円形のかなしみをつくるので
私はそこに同じおおきさの紙を
貼らなくてはならない

選ぶのは厚く、色の赤いものがいい

あなたの半円形のかなしみは
どのような死よりも孤独で
どのような生よりもつめたい

だから私は
あなたのかなしみの隣へ
確固たるものを置く


(液体糊の匂い、飴色のひかり、そして
 ゆっくりとハサミのグリップを握る私)


あなたの半円形のかなしみが
ほんのすこし輪郭を正すとき
私の作業は始まる

切り抜くのはやはり
厚く、色の赤いものがいい

(笹井宏之)

とか。歌集かすぜ!

投稿: goki | 2009年4月10日 (金) 02時35分

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